目が肥える
読み方:めがこえる
「目が肥える」の意味
よいものや同じ種類のものを多く見ることで、その良し悪しや価値を見分ける力が高まることです。
美術品、工芸品、服、写真、商品など、質を見極める力について広く使われます。
「目が肥える」の語源・由来
「肥える」は、体に肉がつくという意味のほか、目・舌・耳などについて、多くの経験を重ねて感じ方や理解力が豊かになる意味でも使われます。
「目が肥える」は、この「能力が豊かになる」という「肥える」の使い方と「目」が結びついた表現です。
ここでいう「目」は単なる視力ではなく、物の価値や良否を見分ける働きを指し、多くのものを見る経験によって、その働きが豊かになることを「肥える」と表しています。
「目が肥える」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に目が肥えている」
「〜に」には、よく見慣れていて価値を判断できる分野や対象が入ります。「骨董品に目が肥えている」「着物に目が肥えている」などの形です。 - 「〜の目が肥える」
「〜の」には、見る経験を積んで鑑識力を高める人や集団が入ります。「消費者の目が肥える」「観客の目が肥えてきた」などと使います。 - 「〜を見て目が肥える」
判断力を高めるきっかけとなった経験を前に置く形です。「名画を見て目が肥える」「一流品を見続けて目が肥えた」などと表せます。 - 「目が肥えているので〜」
すでに高い鑑識力を持っている状態を前提として、その後に判断や選択について述べます。「目が肥えているので妥協しない」「目が肥えていて選ぶのが厳しい」などの形です。
「目が肥える」の例文
- 長年、美術館を巡って本物の作品に触れてきたため、彼女はすっかり目が肥えている。
- 最近は消費者の目が肥えてきたので、見た目だけでは商品の魅力を伝えにくくなった。
- 一流の職人が作った器を何年も見ているうちに目が肥え、細かな仕上がりの違いまで気づくようになった。
「目が肥える」の類似表現
目が利く(めがきく)
「目が利く」は、物の良し悪しや価値を見分ける能力があることをいいます。
「刀剣に目が利く」のように、特定の分野について鑑定する力を持つ場合にも使われます。
「目が肥える」が多くのものを見る経験を経て判断力が高まることを表しやすいのに対し、「目が利く」は、その人がすでに備えている鑑識力に重点があります。
目を肥やす(めをこやす)
「目を肥やす」は、よいものや優れたものを多く見て、物を見る力を養うことです。
「名品を見て目を肥やす」のように使います。
「目が肥える」が判断力の向上やその状態を表すのに対し、「目を肥やす」は、よいものを見ることで自ら判断力を養う行為を表しやすい言い方です。
「目が肥える」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』は、天理本狂言『腥物』をこのことわざが初めて世に出た作品として挙げており、室町時代末期から近世初期の記述として「人の、目のこゑぬやうに」という言い回しが記録されています。
「こゑぬ」は「肥えぬ」にあたり、「目のこゑぬ」という古い言い方がすでに使われていました。
井原西鶴の浮世草子『好色万金丹』(1694年)にも「目の肥たる」という言い方が見られ、現在の「目が肥えた」に近い言い回しが、17世紀末には文献に現れています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「目が肥える」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「目が肥える」「肥える」項。
