力を落とす
読み方:ちからをおとす
「力を落とす」の意味
がっかりして元気や気力をなくすことです。
失敗や悪い知らせなどによって落胆し、気持ちが弱っている状態をいいます。
「力を落とす」の語源・由来
「力」は、体の力だけでなく、能力・勢力・気力なども意味します。
「力を落とす」は、そうした力を失う表現として古くから使われており、文献には勢力が弱まる意味の使い方と、気力を失って落胆する意味の使い方が残っています。
「力を落とす」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜で力を落とす」
「〜」には、落胆の原因となった出来事や結果が入ります。「不合格で力を落とす」「敗戦で力を落とす」などの形です。 - 「力を落としている」
落胆した状態が続いていることを述べる形です。「結果を聞いて力を落としている」「失敗以来、力を落としている」などと使います。 - 「力を落とさないで/力を落とすな」
落ち込んでいる人を励ますときに、否定の形でも使われます。「そんなに力を落とさないで」「ここで力を落とすな」などの形です。
「力を落とす」の例文
- 第一志望の会社から不採用の知らせが届き、彼はしばらく力を落としていた。
- 決勝で惜しくも敗れた選手たちに、監督は「ここで力を落とすな。次の大会がある」と声をかけた。
- 長年続けてきた店を閉めることになり、祖父はすっかり力を落とした。
「力を落とす」の類似表現
気を落とす(きをおとす)
「力を落とす」と意味が近く、多くの場面で言い換えられます。
「気を落とす」は失敗や失望によって気分が沈むことを直接表し、「力を落とす」は元気や気力まで弱った様子を表すときにも使われます。
肩を落とす(かたをおとす)
「肩を落とす」は、落胆して力が抜け、肩が垂れ下がったようになる様子から生まれた表現です。
人の見た目やしぐさを通して落胆を描写したい場合に使いやすい点が「力を落とす」と異なります。
「力を落とす」の古い用例
北畠親房の『神皇正統記』(1339~1343年)には「平氏力をおとし」という言い回しが見られます。
ここでは平氏が勢力を失ったことを述べており、「力を落とす」が現在の落胆だけでなく、力や勢力そのものを失う意味でも使われていたことが分かります。
末広鉄腸の政治小説『雪中梅』上編には、「さう力を落したものではお座いません」という表現があります。
上編は1886年(明治19年)8月に出版されており、この記述では落胆している相手を励ます言葉として使われています。
明治時代には、現在につながる「気力を失う」という使われ方がすでにされていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「力を落とす」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「力を落とす」項。
