読み方:ほうほうのてい

「這々の体」の意味

ひどい目に遭ったり恥をかいたりして、あわててその場から逃げ出すような様子です。

単に急いで立ち去るのではなく、さんざんな状態で退くという含みがあります。

「這々の体」の語源・由来

「這々」は、動詞「這う」の古い形「はう」の言い切りの形を重ねてできた言葉です。

もとは、這うような格好で進むことや、やっとのことで歩くことを表し、そこからさんざんな目に遭ってかろうじて逃れることや、あわてて逃げることにも使われるようになりました。

「体(てい)」は、外から見た姿やありさまを指します。

「這々」と「体」が結びつき、逃げるのが精いっぱいというありさまを表す「這々の体」という言葉が成立しました。

「這々の体」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「這々の体で+逃げる・退散する」
    「で」を付け、逃走や退却を表す動詞につなげるのが基本的な形です。「這々の体で逃げる」「這々の体で退散する」などと使います。
  • 「〜から這々の体で逃げる」
    助詞「から」で、逃げ出した場所や離れた場所を示せます。「会場から這々の体で逃げ出す」「敵陣から這々の体で逃げ帰る」などの形です。
  • 「這々の体で〜へ/〜に逃げ込む」
    「へ」「に」で逃げ込む先を示します。「這々の体で控室へ逃げ込む」「這々の体で森に逃げ込む」などと使います。

「這々の体」の例文

  • 厳しい追及を受けた男は、返答に詰まり、最後には這々の体で会場から逃げ出した。
  • 完敗した一行は、それまでの威勢もなく、這々の体で引き揚げていった。
  • 山道で蜂の群れに追われ、私たちは荷物を抱えたまま這々の体で車まで逃げ戻った。

「這々の体」の類似表現

尻尾を巻く(しっぽをまく)

負けたり恐れたりして、抵抗をやめて退く場合によく使います。

「這々の体」よりも、相手の敗北や弱気な態度をからかったり、低く評価したりする印象を与えやすい表現です。

命からがら(いのちからがら)

危険な状況から、命だけは失わずにかろうじて逃れる場合に使います。

事故や災害、戦闘など生命の危険を伴う場面にも適しており、恥をかいたことや敗北を前提とはしません。

「這々の体」の古い用例

1603~1604年の『日葡辞書』には、「Fǒfǒno(ハウハウノ) teide(テイデ) ニゲタ」という記述が記録されています。

「這々の体で逃げた」に当たる言い回しで、17世紀初めには「〜の体で」と逃げる動作を結びつける表現が使われていました。

1647年の仮名草子『悔草』上には、「はふはふの躰にてにげ去ものおほし」とあります。

「這々」は「はふはふ」、「体」は「躰」と表記されていますが、さんざんな目に遭って逃げ去るという使われ方は現在とよく似ています。

「這々の体」の間違いやすい使い方・表記

「這々」は「這う這う」「這這」とも書かれ、「ほうほう」と読みます。

「々」は同じ漢字を繰り返すことを示す記号なので、「這々」と「這這」は同じ言葉です。

ひらがなで「ほうほうの体」と書くこともあり、古い仮名遣いでは「はふはふ」と書かれました。

文化庁の「現代仮名遣い」の対照表でも、「はふはふの体」に対応する現代仮名遣いとして「ほうほうの体」が示されています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「這々の体」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「這這」「這這の体」項。
  • 文化庁「現代仮名遣い」。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。