火が付いたよう
読み方:ひがついたよう
「火が付いたよう」の意味
急に激しく騒いだり、ひどく慌てたりするさまをいいます。
特に、赤ん坊や子供などが大声で激しく泣き叫ぶ様子にも使われます。
「火が付いたよう」の語源・由来
自分の体や家に火が付いたときのように、急激で激しい動きを見せる様子にたとえた表現です。
火事に直面すれば落ち着いてはいられないことから、激しく騒ぐことや慌ただしく行動することを表すたとえとして使われるようになりました。
「火が付いたよう」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「火が付いたように〜」
「泣く」「泣き出す」「慌てる」「叫ぶ」など、激しい動作を表す動詞へ続けます。「火が付いたように泣き出す」「火が付いたように慌てる」などの形です。 - 「火が付いたような〜」
後ろに名詞を置き、激しく慌ただしい様子を表します。「火が付いたような騒ぎ」「火が付いたような慌てぶり」などと使います。
「火が付いたよう」の例文
- 診察室に入った途端、赤ん坊は火が付いたように泣き出した。
- 突然の避難指示が出ると、駅前は火が付いたような騒ぎになった。
- 締め切りが今日だと気づいた彼は、火が付いたように資料を集め始めた。
「火が付いたよう」の類似表現
蜂の巣をつついたよう(はちのすをつついたよう)
大勢の人が騒ぎ出し、収拾がつかない状態によく使われます。
「蜂の巣をつついたような騒ぎ」のように集団の混乱を表すことが多く、赤ん坊が激しく泣く場合には通常使いません。
上を下へ(うえをしたへ)
人々が入り乱れて混乱する場面に使い、「上を下への大騒ぎ」という形が代表的です。
個人が慌てて行動する様子や激しく泣く様子には向きません。
「火が付いたよう」の古い用例
1771年の談義本『虚実馬鹿語』には、「火の附くやうにねだりおる」という記述があります。
「火の付くよう」に激しく、性急に物をねだるという使われ方で、江戸時代にはすでに激しい動作をたとえる表現として使われていました。
田山花袋が1908年に発表した『生』には、「火のつくやうに泣いて」という一節があります。
ここでは激しく泣く様子に使われており、現在よく見られる「火が付いたように泣く」という使われ方につながる例です。
「火が付いたよう」の間違いやすい使い方・表記
「火の付いたよう」という形も使われます。
「火の付いたよう」「火が付いたよう」のどちらも見られ、「赤ん坊が火の付いたように泣く」「会場が火の付いたような騒ぎになる」などと表現できます。
昔の使われ方には「火の付くよう」という形もあり、「付いた」だけに固定された表現ではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「火が付いたよう」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「火の付いたよう」項。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「火がついたよう」項。
