火が消えたよう
読み方:ひがきえたよう
「火が消えたよう」の意味
急に活動や活気がなくなり、静かで寂しい状態になるさまをいいます。
人の出入りやにぎわいがあった場所・集団などが、それまでとは対照的に静かになった場合に用いる表現です。
「火が消えたよう」の語源・由来
ともしてあった火が消えると、周囲が暗くなります。
その様子を、活気やにぎわいが失われた状態になぞらえた表現です。
「火が消えたよう」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜は火が消えたようだ」
活気を失った場所や集団などを「〜」に置く形です。「祭りの後の町は火が消えたようだ」「客が帰った店内は火が消えたようだ」などと使います。 - 「〜が火が消えたようになる」
にぎわっていた場所などが静かな状態へ変わることを述べる形です。「繁華街が火が消えたようになる」「町が火が消えたようになった」などと使います。 - 「火が消えたように〜」
「静まり返る」「寂れる」「静かになる」などの表現を後ろに続けます。「火が消えたように静まり返る」「火が消えたように寂れる」などの形です。
「火が消えたよう」の例文
- 文化祭が終わって生徒たちが帰ると、校舎は火が消えたように静まり返った。
- 大きな工場が閉鎖されてから、周辺の町は火が消えたようになり、人通りもめっきり減った。
- 孫たちが帰った翌朝、祖父母の家は昨日までの騒がしさが嘘のようで、火が消えたようだった。
「火が消えたよう」の類似表現
閑古鳥が鳴く(かんこどりがなく)
店や施設などに人が来ず、ひっそりとしている状態に多く使います。
「客が来なくて閑古鳥が鳴く」のように、商売の不振を表す場面にもよく用いられる点が異なります。
「火が消えたよう」の古い用例
『源氏物語』「若菜下」には、「火をけちたるやうにて」という表現があります。
「けちたる」は「消した」に当たる古い言い方で、人々がほかへ集まったため、ある邸が静かになった様子に使われています。
現在の「火が消えたよう」「火の消えたよう」と同じ比喩を用いた古い言い方で、11世紀初めごろの用例です。
林芙美子『放浪記(初出)』には、「部屋の中は火が消えたように淋しかった」とあります。
人のいた部屋から仲間が出かけ、一人になった寂しさを表しており、現在と同じ「火が消えたように」という言い回しが使われています。
『放浪記』が初めて掲載されたのは、『女人藝術』1928年10月号から1930年10月号までです。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「火が消えたよう」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「火の消えたよう」項。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「火が消えたよう」項。
- 林芙美子『放浪記(初出)』、初出『女人藝術』1928年10月号~1930年10月号。
