敷居が高い
読み方:しきいがたかい
「敷居が高い」の意味
相手に不義理をしたり、面目のないことがあったりして、その人の家へ行きにくい、またはその人に会いにくいことを意味する慣用句です。
単に緊張する、入りにくいというだけでなく、自分の側に「顔を出しにくい」と感じる事情があることが、本来の意味では重要です。
「敷居が高い」の語源・由来
「敷居」は、門や部屋の出入口の下部に取り付ける横木を指します。
「敷居が高い」は、この家の内と外を隔てる敷居を用いて、ある事情のために家へ入りにくく感じる気持ちを表した言い方です。
ここでいう「高い」は、実際に敷居の高さが増すという意味ではありません。
相手への不義理や後ろめたさによって、出入口を越えて家に入ることが心理的に難しく感じられる状態を表しています。
「敷居が高い」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜は敷居が高い」
訪ねにくく感じている家や相手側を「〜」に置く形です。「あの家は敷居が高い」「先方の家は敷居が高い」などと使います。 - 「〜ので敷居が高い」
不義理や気まずさの原因を先に示す形です。「長くご無沙汰しているので敷居が高い」「約束を破ったので敷居が高い」などと使います。 - 「敷居が高くて〜」
後ろに、訪問したり会ったりできないことを続けます。「敷居が高くて顔を出せない」「敷居が高くて訪ねられない」などの形です。 - 「敷居が高くなる」
不義理などが重なり、以前より訪ねにくくなったことを表せます。「借りを返せず敷居が高くなった」「ご無沙汰が続いて敷居が高くなった」などと使います。
「敷居が高い」の例文
- 何度も誘いを断ってしまったので、今さら彼の家を訪ねるのは敷居が高い。
- 恩師への連絡を何年も怠っていたため、敷居が高くてなかなか研究室へ顔を出せなかった。
- 借りたままの本を返さずにいたせいで、以前より図書館の先生のところへ行く敷居が高くなってしまった。
「敷居が高い」の類似表現
合わせる顔がない(あわせるかおがない)
恥ずかしさや申し訳なさから、その人に会うことができない気持ちを表します。
「敷居が高い」は、相手の家を訪ねたり、その人に会いに行ったりすることへのためらいと結びつきやすい表現です。
「合わせる顔がない」は訪問に限らず、失敗や裏切りなどのために相手と顔を合わせられない場合に広く使えます。
顔向けができない(かおむけができない)
申し訳なさや恥ずかしさのため、その人の前に出られないことをいいます。
「親に顔向けができない」「仲間に顔向けができない」のように、人を直接対象にする場面で使われることが多いです。
「敷居が高い」のように、家の出入りを思わせる言い方ではありません。
「敷居が高い」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』には、江戸時代の評判記『吉原こまざらい』(1661~1673年)から、「見るもうたてきしきゐがたかふて」という記述が挙げられています。
「しきゐがたかふて」という現在の「敷居が高くて」に当たる形が、17世紀の文献にはすでに登場していました。
明治時代以降の文学でも、不義理や面目のなさから人の家へ行きにくいという使われ方が続いています。
「敷居が高い」の間違いやすい使い方・表記
現代では、「高級レストランなので敷居が高い」「初心者には敷居が高い趣味だ」のように、高級で入りにくい、気軽に近づきにくい、難しそうで手を出しにくいという意味でも広く使われています。
令和元年度(2019年度)の「国語に関する世論調査」では、「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」という意味を選んだ人が56.4%もいました。
それに比べ、本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」の方を選んだ人は29.0%だけでした。
文化庁は前者を「本来の意味ではない」ものとして整理していますが、それでも新しい意味で使う人は、実際にはかなり広まっているのです。
本来の意味を重視する文章では、「高級で入りにくい」「格式が高くて気後れする」「初心者には難しい」などと言い換えると、意味の違いによる誤解を避けることができます。
デジタル大辞泉でも、見出し語の意味としては「不義理や面目のなさから訪ねにくい」という従来の意味が示されています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「敷居が高い」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「敷居が高い」項。
- 文化庁『令和元年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』2020年。
