毛が生えたような
読み方:けがはえたような
「毛が生えたような」の意味
あるものより少しだけまさっているものの、大して違わないことを表す慣用句です。
人については、経験や技量が少し上である程度という意味でも使われます。
「素人に毛が生えたような」のように、基準となるものを低く見積もり、それよりはいくらか上だと述べることが多いため、「多少はましだが、まだ十分ではない」という低い評価を含みやすい表現です。
「毛が生えたような」の語源・由来
もともとは、あるものに毛が生えた程度のわずかな成長を見立てた表現です。
そこから、元のものより少し進歩したり、いくらかましになったりした程度をたとえるようになりました。
「毛の生えた」「毛の生えたよう」といった形も古くから使われており、現在の「〜に毛が生えたようなもの」「〜に毛が生えた程度」などにつながっています。
「毛が生えたような」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に毛が生えたようなもの」
「〜に」には、比較の基準となる人や物を入れます。「素人に毛が生えたようなもの」「アルバイトに毛が生えたようなもの」などの形です。 - 「〜に毛が生えた程度」
技量、内容、規模などが基準よりわずかに上であることを述べる形です。「初心者に毛が生えた程度」「日記に毛が生えた程度」などと使います。 - 「〜に毛が生えたような+名詞」
後ろに人や物を表す名詞を続けます。「素人に毛が生えたような選手」「小屋に毛が生えたような建物」などの形です。
「毛が生えたような」の例文
- 料理人を名乗ってはいるが、腕前はまだ素人に毛が生えたようなものだ。
- 新しく建てられた施設は、倉庫といっても物置に毛が生えた程度の小さな建物だった。
- 入社したばかりのころの私は、学生に毛が生えたような新人で、先輩に教わることばかりだった。
「毛が生えたような」の類似表現
五十歩百歩(ごじっぽひゃっぽ)
二つのものに多少の差はあっても、本質的には大きな違いがないことをいいます。
特に、どちらもあまりよくない場合の比較に使われます。
「毛が生えたような」は、「素人に毛が生えたようなもの」のように一方を基準にして、もう一方がそれより少しまさっているという関係を表せます。
どんぐりの背比べ(どんぐりのせいくらべ)
いくつかのものを比べても、どれも似たような程度で、特に優れたものがないことをいいます。
複数のものを横に並べて比べる「どんぐりの背比べ」に対し、「毛が生えたような」は「AよりBが少しまし」という二段階の比較にも使えます。
「毛が生えたような」の古い用例
1692年の評判記『役者大鑑』には、「小づめに毛のはへた立役」という一節が記録されています。
「毛が生えたような」ではなく、「毛のはへた」という言い回しが江戸時代にはすでに使われていました。
折口信夫の「御国座へ――江戸狂言の源之助君――」(1919年)には、「筋書に毛の生えた位」という表現があります。
芝居について、筋書よりはいくらか内容がある程度だと低く評価する文脈で使われており、現在の「〜に毛が生えた程度」に近い形です。
「毛が生えたような」の間違いやすい使い方・表記
「毛が生えたような」は、「心臓に毛が生えている」とは意味が異なります。
「心臓に毛が生えている」は、物おじしない、図太い、厚かましいといった人物の性質について使う表現です。
「素人に毛が生えたような」のように、何かより少しまさっているという意味ではありません。
また、「素人に毛の生えたようなもの」のように、「毛の生えた」とする形も使われます。
古い文献では「毛の生えた」「毛のはへた」という形が多く見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「毛が生えたような」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「毛の生えた」項。
- 折口信夫「御国座へ――江戸狂言の源之助君――」『折口信夫全集 22』中央公論社、1996年(初出『都新聞』1919年2月27日)。
