笑壺に入る
読み方:えつぼにいる
「笑壺に入る」の意味
物事が思い通りに運んで、大いに喜ぶことを意味する慣用句です。
満足したり得意な気持ちから、思わず笑みがこぼれるような状態をいいます。
「笑壺に入る」の語源・由来
「笑壺」は、古くから笑い興じることや、物事が思い通りになってほくそ笑むことを表した言葉です。
「笑壺」の語源は一説に定まっていませんが、笑わずにはいられない体の急所を「壺」と呼んだことに由来するという見方があります。
「壺」には、狙う場所や急所、要点という意味もあります。
古い時代の「笑壺に入る」には、大勢で笑い興じる意味と、思い通りになって一人で喜ぶ意味の両方がありました。
「笑壺に入る」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜て笑壺に入る」
前に、喜ぶきっかけとなった出来事を置きます。「交渉が思惑どおりに進んで笑壺に入る」「作戦が当たって笑壺に入る」などの形です。 - 「笑壺に入っている」
喜んで満足している状態を表します。「成功を喜んで笑壺に入っている」「好結果に笑壺に入っている」などと使います。 - 「独り笑壺に入る」
自分だけで満足し、喜んでいる様子を表す形です。「結果を見て独り笑壺に入る」「思惑どおりになって独り笑壺に入る」などと使います。
「笑壺に入る」の例文
- 自分の提案がそのまま採用され、担当者はすっかり笑壺に入っていた。
- 監督は練り上げた作戦が見事に当たるのを見て、笑壺に入った。
- 仕掛けたサプライズが予想以上に成功し、彼はみんなの反応を眺めながら独り笑壺に入っていた。
「笑壺に入る」の類似表現
悦に入る(えつにいる)
物事がうまくいったり、自分の出来栄えに満足したりして喜ぶことを表し、多くの場面で「笑壺に入る」と近い意味になります。
「悦に入る」は自分で満足して得意になっている気持ちに使いやすく、「作品を眺めて悦に入る」のような言い方もできます。
ほくそ笑む(ほくそえむ)
人に気づかれないように、ひそかに笑うことです。
自分の計画がうまくいったときや、自分に有利な展開になったときによく使われます。
「ほくそ笑む」は笑い方そのものを表し、喜びを表に出さない含みがあります。
「笑壺に入る」の古い用例
『今昔物語集』巻二十四には、「女房共皆ゑつぼに入にけり」とあります。
ここでは一人の満足ではなく、その場にいた女房たちがそろって笑い興じる意味で使われています。
12世紀初めごろには、「ゑつぼに入る」という言い回しがすでに見られます。
13世紀前半成立とされる『平家物語』巻一には、「法皇ゑつぼにいらせおはして」とあります。
法皇が得意になって喜ぶ場面で、現在の「思い通りになって大いに喜ぶ」という使われ方に近い例です。
『日葡辞書』(1603~1604年)では、「笑壺に入る」に、人の仕掛けた計略や望んでいた状況に陥るという別の意味も記録されています。
また、「人を笑壺に入るる」という他動詞の形で、人を計略に陥れる意味にも使われていました。
この使い方は、現在一般的な「大いに喜ぶ」という意味とは異なります。
「笑壺に入る」の間違いやすい使い方・表記
「笑壺に入る」は「えつぼにいる」と読みます。
「入る」は通常「はいる」とも読みますが、この慣用句では「えつぼにはいる」とは読みません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「笑壺に入る」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「笑壺に入る」「笑壺」項。
- 『今昔物語集』巻二十四。
- 『平家物語』巻一。
- 『日葡辞書』1603~1604年。
