累が及ぶ
読み方:るいがおよぶ
「累が及ぶ」の意味
悪い出来事や災難の影響が関係のある人にまで広がり、迷惑や被害を受けることです。
自分には直接の原因がなくても、家族や仲間、所属する組織などとの関係によって巻き添えになる場合にも使われます。
「累が及ぶ」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に累が及ぶ」
「〜に」には、悪い影響を受ける人や組織が入ります。「家族に累が及ぶ」「関係者に累が及ぶ」などの形です。 - 「〜にまで累が及ぶ」
予想以上に広い範囲へ影響が広がることを強調する形です。「親族にまで累が及ぶ」「取引先にまで累が及ぶ」などと使います。 - 「〜に累が及ぶことを恐れる」
周囲の人が巻き添えになることを心配する場合によく使われます。「部下に累が及ぶことを恐れる」「家族に累が及ぶことを恐れた」などの形です。 - 「〜に累が及ばないように〜」
悪い影響が広がるのを避けようとする場合の形です。「仲間に累が及ばないようにする」「会社に累が及ばないように黙る」などと使います。
「累が及ぶ」の例文
- 事件への関与が疑われれば、何も知らない家族にまで累が及ぶおそれがある。
- 彼は自分の失敗によって同僚に累が及ぶことを恐れ、すべての責任を自分で負おうとした。
- 情報漏えいの影響が取引先にまで累が及ばないように、会社はすぐに対策を始めた。
「累が及ぶ」の類似表現
巻き添えを食う(まきぞえをくう)
意味には重なる部分が多くあります。
「巻き添えを食う」は、他人の争いや事故などに巻き込まれて被害を受ける側を主語にし、「無関係なのに巻き添えを食った」のように使えます。
「累が及ぶ」よりも日常会話として使いやすく、直接的な言い方です。
とばっちりを受ける(とばっちりをうける)
本来は関係のない人が、他人の問題から思いがけない迷惑を受ける場合に使います。
「上司の機嫌が悪くてとばっちりを受けた」のような比較的身近な迷惑にも使えるのに対し、「累が及ぶ」は事件、不祥事、処罰などの重大な影響について使われることが多く、やや改まった表現です。
「累が及ぶ」に含まれる「累」の意味
「累」には、「つながる・かかわりあう」「わずらい」という意味のほか、「わずらわす」「巻き添えを加える」という意味があります。
「累が及ぶ」の「累」は、物事が積み重なるという意味ではなく、人との関わりから生じるわずらいや災いを指しています。
「累が及ぶ」の古い用例
坂口安吾の『露の答』には、「累の及ぶことを憚り」という表現が使われています。
この作品は1945年(昭和20年)10月1日に『新時代』創刊号で発表されました。
「累の及ぶ」の「の」は主語を示しており、現在の「累が及ぶ」に近い形です。
山本周五郎の『泥棒と若殿』には、「若殿の身にも累が及ぶかもしれない」という記述があります。
同作の初出は1949年(昭和24年)12月で、この時期には現在と同じ「累が及ぶ」という形が使われています。
「累が及ぶ」の間違いやすい使い方・表記
「累」を同じ読みの「類」として、「類が及ぶ」と書かないように注意が必要です。
この場合の「累」は、わずらいや巻き添えに関係する意味を持つ漢字です。
また、「累が及ぶ」と「累を及ぼす」は視点が異なります。
「家族に累が及ぶ」は、家族のところまで悪い影響が届くことをいいます。
「家族に累を及ぼす」では、ある人の問題によって家族を巻き添えにすることを表します。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「累が及ぶ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「累」。
- 坂口安吾『露の答』、『新時代』創刊号、経国社、1945年10月1日。
- 山本周五郎『泥棒と若殿』、『講談倶楽部』大日本雄弁会講談社、1949年12月。
