寝返りを打つ
読み方:ねがえりをうつ
「寝返りを打つ」の意味
「寝返りを打つ」には、寝たまま体の向きを変えるという意味と、味方を裏切って敵方につくという意味があります。
後者は慣用的な用法で、争いや競争などで、それまで属していた側から相手側へ移ることをいいます。単に約束を破ったり、期待に反したりする場合には、通常「寝返りを打つ」とはいいません。
「寝返りを打つ」の語源・由来
もともとの「寝返り」は、寝たまま体の向きを反対側などへ変える動作を指します。そこから、それまでいた側から別の側へ向きを変えることになぞらえ、味方を離れて敵方につく意味でも使われるようになりました。
「寝返る」にも、体の向きを変える意味と、味方を裏切って敵方につく意味の両方があります。
「寝返りを打つ」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に寝返りを打つ」
「敵側に」「相手方に」など、「に」の前に新しく属する側を置きます。裏切りの意味で使うときの基本的な形です。 - 「寝返りを打って〜」
「寝返りを打って敵方につく」「寝返りを打って情報を渡す」など、立場を変えたあとの行動へ続ける形です。 - 「何度も寝返りを打つ」
「何度も」「しきりに」などを伴う場合は、寝ている間に体の向きを変える文字どおりの意味で使うのが一般的です。 - 「寝返りを打たない」
裏切らないことを表す否定形です。「寝返りを打つはずがない」「寝返りを打つことはない」といった形にもなります。
「寝返りを打つ」の例文
- 蒸し暑くてなかなか眠れず、夜中に何度も寝返りを打った。
- 劣勢を悟った武将が敵方に寝返りを打ち、戦況は大きく変わった。
- どれほど有利な条件を提示されても、彼は仲間を捨てて寝返りを打つことはなかった。
「寝返りを打つ」の類似表現
寝返る(ねがえる)
裏切りの意味では「寝返りを打つ」とほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。「敵方に寝返る」「反対派に寝返る」のように、一語の動詞として簡潔に使える点が異なります。
裏切る(うらぎる)
「裏切る」は「味方を裏切る」だけでなく、「信頼を裏切る」「期待を裏切る」「約束を裏切る」など、対象の範囲が広い言葉です。
「寝返りを打つ」は、それまで属していた側を離れ、敵方や対立する側へ移るという場面に適しています。
「寝返りを打つ」の古い用例
『足利本天眼目抄』には、1471~1473年ごろの用例として「寐かへりを打つ」という形が見られます。ここでは、寝ている体の向きを変える文字どおりの意味で使われています。
裏切って別の側につく意味では、1828年の雑俳『柳多留』九七に「ねがへりをこっちへ打た関ケ原」という用例があります。江戸時代後期には、「寝返りを打つ」が陣営を変える比喩的な意味でも使われていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「寝返りを打つ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「寝返を打つ」「寝返」「寝返る」項。
- 『足利本天眼目抄』(1471~1473年ごろ)。『精選版 日本国語大辞典』「寝返を打つ」項所収の用例による。
- 『柳多留』九七(1828年)。『精選版 日本国語大辞典』「寝返を打つ」項所収の用例による。
