底を突く
読み方:そこをつく
「底を突く」の意味
蓄えていた物や金銭などがすっかりなくなること、または相場や景気などが下がって最低の水準に達することを意味します。
食料・燃料・資金・在庫など、使うにつれて減っていくものについて用いられるほか、株価や価格、景気などの低下にも使われます。
さらに、物事が極端に悪い状態まで落ち込む意味で用いられることもあります。
「底を突く」の語源・由来
「底」は、もともと容器などのいちばん下の部分を指します。
中に入っていたものが減り、底に触れられるほどになるところから、「底を突く」が蓄えなどを使い果たす意味で用いられるようになったと考えられています。
「底」には、物事の極限という意味のほか、相場が下落して最も安くなった状態を指す使われ方もあります。
相場についての「底を突く」は、遅くとも1917年の取引所用語に見られ、最低値に達することを表していました。
「底を突く」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〔蓄え・在庫など〕が底を突く」
食料、燃料、資金、在庫など、蓄えていたものを主語にする形です。「備蓄が底を突く」「運転資金が底を突いた」などと使います。 - 「〔相場・景気など〕が底を突く」
下落している価格や経済状態が最低水準に達する場合に使います。「株価が底を突く」「景気が底を突いた」などの形です。 - 「底を突いて〜」
「て形」にして、その後に起こったことや状態を続けます。「在庫が底を突いて欠品する」「景気が底を突いて持ち直す」などと続けます。 - 「底を突きそうだ/底を突きかける」
蓄えがなくなる直前の状態にも使えます。「燃料が底を突きそうだ」「手持ち資金が底を突きかけている」などの形です。
「底を突く」の例文
- 大雪で配送が止まり、山小屋に残っていた食料は三日目に底を突いた。
- 新製品の開発費が予想以上に膨らみ、追加融資を受けなければ来月にも資金が底を突きそうだ。
- 半年以上続いた下落の末に株価は底を突き、その後は徐々に値を戻していった。
「底を突く」の類似表現
底を打つ(そこをうつ)
相場や景気などが下がりきり、最低水準に達する場合には、「底を突く」と多くの場面で言い換えられます。
「底を打つ」は特に相場や経済指標について使われ、下落が止まった局面をいう表現です。
「食料が底を突く」「資金が底を突く」のような、蓄えがなくなる意味には、通常「底を打つ」は使いません。
払底(ふってい)
「払底」は、物がすっかりなくなること、または非常に乏しくなることを表します。
「原料が払底する」「人材が払底する」など「〜が払底する」という言い方で使えます。
「底を突く」は手持ちの食料や資金などが尽きる過程を表しやすいのに対し、「払底」は必要な物や人などが不足している状態にも広く使われます。
「底を突く」の古い用例
1917年に大蔵省主税局が編纂した『取引所用語字彙』には、相場が最低値に達する意味の「底を突く」が収録されています。
少なくとも大正時代には、取引所の専門用語としてこの言い方が成立していました。
織田作之助の『アド・バルーン』には、「世の中の不景気は底をついて」という表現があります。
同作は1946年(昭和21年)3月に『新文学』で発表されており、相場そのものではなく、社会の不景気が極端な状態まで進んだことを「底をつく」で表しています。
表記は「突」を使わず、「ついて」とひらがなになっています。
1964年の安部公房『他人の顔』には、「現金が底をついてしまった」という記述が残されています。
この時期には、現在と同じく、手持ちの金銭などがなくなる意味でも使われていました。
「底を突く」の間違いやすい使い方・表記
蓄えがなくなる意味では、なくなる物を「が」で示すのが基本です。
「食料が底を突く」「資金が底を突く」とし、「食料を底を突く」とは言いません。
「底をつく」とひらがなで書くこともありますが、慣用句の見出しとしては「底を突く」という表記が使われます。
ただし、文学作品には「底をついて」のような仮名書きの例も見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「底を突く」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「底を突く」項。
- 『ルーツでなるほど慣用句辞典』「底を突く」項。
- 織田作之助「アド・バルーン」、『日本文学全集72 織田作之助 井上友一郎集』集英社、1975年(初出『新文学』1946年3月)。
