読み方: おいうちをかける
意味: すでに苦しい状態にある人や物事に、さらに攻撃や不利益を加えること。

「追い討ちを掛ける」の意味

最初の打撃だけでも十分に苦しいところへ、別の悪材料が重なり、状況がさらに悪化する様子を示します。相手の弱みにつけ込んで攻める行為だけでなく、災害、病気、物価高、事故などが続けて被害を与える場面にも使われます。

相手を意図的に攻撃する場合にも、悪い出来事が偶然重なる場合にも使える表現です。ただし、いずれも否定的な状況を表し、よい出来事をさらに後押しする意味では使いません。

「追い討ちを掛ける」の使い方

「不況に物価高が追い討ちを掛ける」のように、先に起きている問題を「に」で示し、後から加わる出来事を主語にする形で使います。

人の行為を表す場合は、「落ち込んでいる相手に追い討ちを掛ける」「厳しい言葉で追い討ちを掛ける」のように、攻撃を受ける相手を「に」、攻撃の手段を「で」で示せます。

悪い出来事が続けて起こったことを強調するときには、「追い討ちを掛けるように、さらに問題が起きた」という形も使われます。攻撃を受けた側から述べる場合は、「追い討ちを掛けられる」と受け身にします。

「追い討ちを掛ける」の例文

  • 長引く不況に原材料費の高騰が追い討ちを掛け、小さな店は閉店に追い込まれました。
  • 失敗して落ち込んでいる友人に、責める言葉で追い討ちを掛けるのはやめましょう。
  • けが人が相次ぐチームに、主将の欠場が追い討ちを掛けました

「追い討ちを掛ける」の類似表現

傷口に塩を塗る

「傷口に塩を塗る」は、苦しんでいる人に厳しい言葉を浴びせるなどして、精神的な痛みをさらに強める場面で多く使われます。

「追い討ちを掛ける」は使用できる対象がより広く、人の言動だけでなく、不況や災害などの出来事が状況を悪化させる場合にも使えます。

泣きっ面に蜂

「泣きっ面に蜂」は、悪いことが起きて困っているところへ、さらに別の不運が重なる状態をたとえた言葉です。

「追い討ちを掛ける」は、「物価高が家計に追い討ちを掛けた」のように、状況を悪化させた原因を主語にできます。「泣きっ面に蜂」は、不運が重なった人の状態をまとめて述べる表現です。

「追い討ち」とはどのような意味?

「追い討ち」は、もともと逃げる敵を追いかけて攻撃することを指す言葉です。

「追い撃ち」「追い打ち」とも表記されます。

そこから、すでに打撃を受けている相手をさらに攻めたり、苦しい状況をいっそう悪化させたりする意味でも使われるようになりました。「追い討ちを掛ける」では、現在、この比喩的な意味が広く用いられています。

「追い討ち」の古い用例

元禄11年(1698年)の浮世草子『新色五巻書』には、「おい打」という表記の用例が見られます。相手の弱みにつけ込み、さらに攻める意味で使われており、江戸時代前期には現在につながる比喩的な用法が現れていました。

享保24年(1739年)の随筆『常山紀談』には、敗走した者が「追討に逢ふ」と記されています。こちらは、逃げる相手を追って攻撃する軍事的な意味の用例です。

間違いやすい使い方・表記

「追い討ち」「追い撃ち」「追い打ち」は、いずれも「おいうち」と読みます。表記は異なりますが、「弱っているところへ、さらに打撃を加える」という意味では同じように使われます。

「追い討ちを掛ける」と「追い打ちをかける」も、意味に違いはありません。一般の文章では、漢字を少なくした「追い打ちをかける」という表記も多く見られます。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「追い討ちを掛ける」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
  • 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「泣きっ面に蜂」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。