被害妄想
読み方:ひがいもうそう
「被害妄想」の意味
被害妄想とは、自分や身近な人に対して、他人や集団などが悪意を持ち、危害を加えようとしていると強く信じる妄想です。
広い意味では、誰かに見張られていると考える注察妄想、あとをつけられていると考える追跡妄想、毒を盛られていると考える被毒妄想なども含まれます。
「被害妄想」の語源・由来
「被害妄想」は、「被害」と「妄想」を組み合わせた精神医学の用語です。
中国古典の故事などから生まれた表現ではなく、妄想をその内容によって分ける名称の一つとして用いられています。
「被害妄想」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「被害妄想に陥る」
そのような考えに強くとらわれることを表します。「強い不安から被害妄想に陥る」などの形です。 - 「被害妄想を抱く」
人が被害についての妄想を持っていることを述べます。「周囲に狙われているという被害妄想を抱く」などと使います。 - 「被害妄想が強い/ひどい」
程度について述べる形です。「被害妄想が強くなる」「被害妄想がひどい」などと続けます。
「被害妄想」の例文
- 医師は、患者が周囲から監視されているという被害妄想を抱いていると判断しました。
- 彼は次第に被害妄想に陥り、同僚たちが自分を追い出そうとしていると思い込むようになりました。
- その小説では、主人公が被害妄想にとらわれ、何気ない出来事にも自分への悪意を感じる姿が描かれています。
「被害妄想」の類似表現
迫害妄想(はくがいもうそう)
精神医学では「被害妄想」とほぼ同じ意味で使われる表現です。
疑心暗鬼(ぎしんあんき)
疑いの気持ちを持つと、何でも恐ろしく疑わしいものに感じられることをいいます。
精神医学上の妄想を指す語ではないため、「被害妄想」とは使われる範囲が異なります。
「被害妄想」を構成する言葉の意味
妄想(もうそう)
ここでいう「妄想」は、日常語でいう単なる空想や想像とは異なります。
精神医学では、明らかな反証があっても確信が保たれる、誤った揺るぎない信念を指します。
「被害妄想」の古い用例
芥川龍之介の『河童』は、『改造』第九巻第三号に1927年(昭和2年)3月1日付で発表されました。
作中には、
「雌の河童に掴まることを恐れてゐる被害妄想の多い狂人です。」
とあります。
「被害妄想の多い」という現在ではあまり見かけないつながり方で使われており、当時の読みは「ひがいもうぞう」とされています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「被害妄想」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「被害妄想」項。
- 福島貴子・針間博彦「妄想」『脳科学辞典』、2014年。
- 芥川龍之介「河童」『改造』第九巻第三号、改造社、1927年3月1日。
