乱臣賊子
読み方:らんしんぞくし
「乱臣賊子」の意味
国を乱す臣下と、親に背いたり害を与えたりする子を指す言葉です。
不忠・不孝の者を厳しく非難する意味を持ちます。
「乱臣賊子」の語源・由来
典拠は『孟子』「滕文公下」です。
同篇には、
孔子成《春秋》而亂臣賊子懼。
とあり、「孔子が『春秋』を完成させると、乱臣賊子が恐れた」と記されています。
直前には「臣弑其君」「子弑其父」と、臣下が君主を殺すこと、子が父を殺すことが挙げられています。
原典にはすでに「亂臣賊子」の四字が連続して現れています。
したがって、元になる故事や文章を後世に四字へ縮めた表現ではありません。
「亂」が現在の日本の字体では「乱」となる点を除けば、現在と同じ四字構成です。
「乱臣賊子」の使い方
次のような形で使われます。
- 「乱臣賊子と呼ぶ」
人物や集団を厳しく非難して名づけるときに使います。「反逆者を乱臣賊子と呼ぶ」などの形です。 - 「乱臣賊子とみなす」
歴史上の人物評価や、ある時代の価値観を説明するときに使います。「政敵を乱臣賊子とみなす」などと続けます。 - 「乱臣賊子を〜」
後ろに「討つ」「罰する」「非難する」などを続けます。歴史を扱う文章や古風な論調で見られる形です。
「乱臣賊子」の例文
- その史書では、王位を奪おうとした家臣が乱臣賊子として厳しく描かれています。
- 親の意見に反対しただけの子どもまで乱臣賊子と呼ぶのは、あまりに重い言い方です。
- 当時の論者は、主君に背いた人物を乱臣賊子とみなし、処罰を求めました。
「乱臣賊子」の類似表現
乱臣逆子(らんしんぎゃくし)
意味はほぼ同じです。
「逆子」は親に背く子を指し、「賊子」を「逆子」に置き換えた形として使われます。
逆臣賊子(ぎゃくしんぞくし)
「逆臣」は主君に反逆する臣下を指します。
「乱臣賊子」と意味上の大きな差はなく、不忠・不孝の者を表す類義形です。
「乱臣賊子」を構成する言葉の意味
乱臣
「乱臣」には「国を乱す臣下」という意味があります。
なお、「乱」には古く「治める」という意味もあるため、「乱臣」という語だけでは「天下をよく治める臣下」を表す場合もあります。
「乱臣賊子」では「国を乱す臣下」の意味です。
賊子
「賊」には、盗人という意味のほかに「そこなう・傷つける」という古い意味があります。
「賊子」はここでは親に背き、害を与える子のことで、「盗賊の子」という意味ではありません。
「乱臣賊子」の古い用例
北畠親房の『神皇正統記』(1339~1343年)下には、
乱臣賊子と云者は、そのはじめ心ことばをつつしまざるよりいでくるなり
という用例があります。
「乱臣賊子と云者は」と日本語の文中へ組み込まれており、南北朝期にはすでにこの四字形が用いられていたことが分かります。
森鷗外の「藤棚」(1912年)には、
「乱臣賊子の極印を打つ」
という表現があります。
ここでは、ある考えに従わない人へ一方的に悪い評価を与えることをたとえており、君臣・親子の関係を直接述べない比喩的な使い方が見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「乱臣賊子」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「乱臣賊子」項。
- 小林勝人訳注『孟子』下、岩波文庫、岩波書店、1972年。
- 北畠親房著、岩佐正校注「神皇正統記」『日本古典文学大系87 神皇正統記・増鏡』岩波書店、1965年。
- 森鷗外「藤棚」『太陽』第18巻第9号、博文館、1912年。
