羊頭狗肉
読み方:ようとうくにく
「羊頭狗肉」の意味
「羊頭狗肉」とは、見かけや宣伝は立派でも、実際の内容や実質がそれに伴っていないことです。
外側をよく見せて中身をごまかすような行為を批判するときには、強い皮肉を含みます。
「羊頭狗肉」の語源・由来
「羊頭狗肉」は、「羊頭を懸けて狗肉を売る」という表現を縮めたものです。
南宋の僧・無門慧開が1228年にまとめた禅書『無門関』第六則「世尊拈花」の評唱には、
「壓良爲賤、懸羊頭賣狗肉」
とあります。
無門慧開が釈迦の振る舞いを評する中で、「羊の頭を掲げながら、実際には犬の肉を売る」という比喩を用いた箇所です。
実際の商人について語った故事ではありません。
『無門関』にあるのは「懸羊頭賣狗肉」という形で、現在の四字の「羊頭狗肉」がそのまま記されているわけではありません。
これより古い類似表現は『晏子春秋』内篇雑下第六に見られます。
晏子が斉の霊公をいさめる場面に
「猶懸牛首於門,而賣馬肉於內也」
とあり、門には牛の首を掲げながら内では馬肉を売る、というたとえになっています。
ここでは「牛首」と「馬肉」であり、「羊頭」と「狗肉」ではないため、現在の四字熟語そのものの出典とは区別する必要があります。
「懸羊頭賣狗肉」から「羊頭狗肉」という四字形がいつ成立したのかは、明確には定まっていません。
「羊頭狗肉」の使い方
次のような形で使われます。
- 「羊頭狗肉だ/である」
商品、サービス、企画などについて判断を述べるときに使います。 - 「羊頭狗肉の〜」
後ろに「商売」「広告」「企画」などを続けます。 - 「羊頭狗肉と評する」
宣伝や計画の実態を批評する文章などで使います。 - 「羊頭狗肉も甚だしい」
表に示された内容との食い違いを強く非難するときの表現です。
「羊頭狗肉」の例文
- 豪華な設備をうたっていた宿だったが、実際は写真と大きく違い、利用者から羊頭狗肉だと批判された。
- 地域支援を掲げた企画なのに、予算の大半が宣伝費に使われるのでは、羊頭狗肉のそしりを免れない。
- パッケージだけ高級感を出して品質を落とすような商売は、羊頭狗肉も甚だしい。
「羊頭狗肉」の類似表現
有名無実(ゆうめいむじつ)
名前や制度、肩書きなどは存在するものの、それに見合う実質がない場合に広く使います。
意図的に人を欺いているとは限らないため、「羊頭狗肉」よりもごまかしや欺瞞の含みが弱い場面にも使えます。
羊質虎皮(ようしつこひ)
外見だけは立派で、中身がそれに見合わないことをいいます。
「虎の皮をかぶった羊」という組み立てのため、とくに見た目の立派さと実力・本質との落差を述べる場合に適しています。
「羊頭狗肉」の古い用例
中島棕隠の漢詩文集『水流雲在楼集』は1854年に刊行され、その下巻「七尾雑題」に、
「回顧却慚城市俗、羊頭狗肉互偸真」
という用例があります。
日本で「羊頭狗肉」という現在と同じ四字形が使われた早い例として挙げられており、少なくとも幕末にはこの語形が日本の漢詩文で用いられていました。
「羊頭狗肉」の間違いやすい使い方・表記
「狗」は「いぬ」を意味する漢字ですが、この四字熟語では音読みの「く」で、「ようとうくにく」と読みます。
「狗」を「犬」に置き換えた「羊頭犬肉」は、一般的な四字熟語の表記ではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「羊頭狗肉」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「羊頭狗肉」項。
- 無門慧開『無門関』第六則「世尊拈花」。
- 『晏子春秋』巻六・内篇雑下第六。
