立身出世
読み方:りっしんしゅっせ
「立身出世」の意味
「立身出世」とは、社会的に成功して高い地位や名声を得て、世間に認められることです。
「立身出世」の語源・由来
「立身」と「出世」は、もともと別々の背景を持つ言葉です。
「立身」は、中国の儒教古典『孝経』の開宗明義章にある
「立身行道、揚名於後世、以顕父母」
という句に見られます。
身を立てて正しい道を行い、後世に名をあげて父母の名誉を高めることが、孝の完成として説かれています。
ここでの「立身」は、単なる地位の上昇ではなく、人格を修めて身を立てることを含む語でした。
「出世」は日本では仏教語として古くから使われ、仏がこの世に現れることや、俗世間を離れて仏道に入ることなどを表しました。
禅宗では住持になることにも「出世」が使われ、そこから世俗でも高い身分や地位を得る意味へ広がりました。
社会的な栄進を表す用例は、中世の日本語資料にも見られます。
現在の「立身出世」は、『孝経』に四字のまま出てくる語ではありません。
異なる背景を持つ「立身」と「出世」が結びついた表現で、明治維新後には、学問や仕事を通して社会的な地位を高めるという考え方と強く結びつきました。
「立身出世」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「立身出世する」
成功した人物について述べるときに使います。「若くして立身出世する」「商売で立身出世する」などの形です。 - 「立身出世を目指す/望む」
将来の目標として述べる形です。「立身出世を目指す青年」「立身出世を望む人」などと使います。 - 「立身出世の〜」
後ろに「夢」「野心」「道」などを続けます。「立身出世の夢」「立身出世の道」などの形です。
「立身出世」の例文
- 地方の小さな会社から事業を広げ、彼は若くして立身出世した。
- 彼女は役職や肩書きよりも自分の仕事を大切にしており、立身出世を望んでいるわけではない。
- 祖父は若いころ、立身出世の夢を抱いて故郷を離れたという。
「立身出世」の類似表現
青雲之志(せいうんのこころざし)
高い地位につき、功名を立てようとする志をいいます。
「立身出世」が成功した状態にも使えるのに対し、「青雲之志」はまだ実現していない志や望みについて使います。
功成名遂(こうせいめいすい)
立派な仕事や事業を成し遂げ、名声を得ることです。
社会的地位の上昇そのものより、成し遂げた功績と名声をいう語です。
「立身出世」の古い用例
歌舞伎『幼稚子敵討』(1753年)二には、
「印可さへ譲り請さっしゃれば、立身出世は見へてござる」
とあります。
少なくとも18世紀半ばには、現在と同じ「立身出世」の四字形が日本語で使われていました。
明治期になると、二葉亭四迷『浮雲』にも
「立身出世すればこそ学問だ」
という用例があり、学問と社会的成功を結びつける当時の価値観を映す言葉として使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「立身出世」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「立身出世」「立身」「出世」項。
- 『孝経』開宗明義章。
- 竹内洋「立身出世主義の論理と機能―明治後期・大正前期を中心に―」『教育社会学研究』第31集、日本教育社会学会、1976年、119~129頁。
