落花流水
読み方:らっかりゅうすい
「落花流水」の意味
「落花流水」は、散り落ちる花と流れる水、また、そのような去りゆく春の景色を表す四字熟語です。
そこから、物事が衰えていくこと、時が過ぎ去ること、別れなどをたとえる場合もあります。
もう一つ、男女が互いに慕い合い、気持ちが通じていることを表す意味があります。
「落花流水」の語源・由来
「落花流水」という四字の並びは、中国の唐代の詩に実際に使われています。
晩唐の詩人・高駢(こうべん)の「訪隠者不遇」には、
落花流水認天台
とあります。
「落花流水」を、天台山を訪れたときの景色の中に置いた詩句です。
現在と同じ「落花流水」の四字がそのまま使われています。
ただし、高駢の詩だけを唯一の起源とするのは適切ではありません。
唐の李嘉祐(りかゆう)の「聞逝者自驚」にも
「落花流水共添悲」
、李群玉(りぐんぎょく)の詩にも
「落花流水」
の四字が見られます。
唐代には、散った花と流れる水を組み合わせた景物表現として、すでに複数の詩人が用いていました。
男女が慕い合う意味は、こうした唐詩が直接相思相愛を述べたものではありません。
花が水に身を任せ、水が花を受け入れて運ぶという関係が人の情に重ねられて生まれた意味です。
13世紀の禅籍『従容録』には、
「落花有意随流水、流水無情送落花」
という句があります。
落花と流水を意思があるもののように描く表現ですが、ここでは禅の境地を示す句として使われています。
現在の日本語にある「男女が互いに慕い合う」という意味とそのまま同じではありません。
「落花流水」の使い方
次のような形で使われます。
- 「落花流水の情」
男女が互いに慕い合う気持ちについて使います。「二人に通う落花流水の情」などの形です。 - 「落花流水のごとく〜」
文学的な文章で、物事が移ろっていく様子や、二人が引かれ合う様子をたとえます。「落花流水のごとく移ろう」「落花流水のごとく引かれ合う」などと使います。
「落花流水」の例文
- 川面を花びらが静かに流れていく光景には、落花流水の趣がありました。
- かつて栄えた商店街も時代の変化を受け、落花流水のように昔の面影を失っていきました。
- 互いに好意を抱いていた二人は、やがて落花流水の深い仲になりました。
「落花流水」の類似表現
相思相愛(そうしそうあい)
互いに相手を思い、愛し合っていることを直接表す言葉です。
「落花流水」が持つ春景色や衰退などの意味はなく、恋愛関係について述べたい場合には意味の範囲がより明確です。
流水落花(りゅうすいらっか)
「流水」と「落花」の順序を入れ替えた形で、「落花流水」の異形として使われます。
多くの場合、同じ意味の表現として扱われます。
「落花流水」の古い用例
日本では、大窪詩仏(おおくぼしぶつ)の漢詩集『詩聖堂詩集』三編に「落花流水」が見られます。
三編は天保9年(1838)に刊行され、
小魚亦愛春光否、直遡落花流水来
とあります。
この用例では「落花流水」は、春の水辺を描く景物として使われています。
『詩聖堂詩集』三編が1838年刊であることも書誌資料から確認できます。
明治20年(1887)の宮崎湖処子『日本情交之変遷』には、
嗟落花流水情ある物に靡ひくは
とあり、男女の情に関わる表現として使われています。
春景色を指す用例とは異なり、明治期には恋愛・男女関係を表す意味が日本語で用いられていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「落花流水」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「落花流水」項。
- 三省堂編修所編『新明解四字熟語辞典』第2版、三省堂、2013年、「落花流水」項。
- 『全唐詩』巻598、高駢「訪隠者不遇」。
- 中華民国教育部『成語典』2020年、「落花流水」項。
