八方美人
読み方:はっぽうびじん
「八方美人」の意味
だれからも悪く思われないように、相手に合わせて愛想よく振る舞うこと、また、そのような人のことです。
多くは褒め言葉ではなく、節操がない、本人の本心が見えにくいといった非難を込めて使います。
「八方美人」の語源・由来
「八方」は、東西南北とその間の四つの方角を合わせたすべての方向を指し、そこから「あらゆる方面」という意味でも使われます。
「八方美人」は、「どの方向から見ても難点のない美人」という字面の意味から生まれた表現です。
それが人との付き合い方に移り、周囲のあらゆる人に対してうまく振る舞う人をいうようになりました。
特定の中国古典の故事に基づく四字熟語ではなく、現在の四字の形がいつ成立したのかは明確ではありません。
「八方美人」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「八方美人だ」
人物について述べるときに使います。「彼は八方美人だ」「あの人は少し八方美人だ」などの形です。 - 「八方美人な〜」
後ろに「態度」「振る舞い」「性格」などを続けます。「八方美人な態度」「八方美人な振る舞い」などと使います。 - 「八方美人になる」
周囲に嫌われまいとして、そのような振る舞いをするようになることを表します。「人間関係で八方美人になる」などの形です。
「八方美人」の例文
- 彼は取引先ごとに意見を変えるので、社内では八方美人だと思われている。
- 誰からも嫌われたくないと考えているうちに、彼女はいつしか八方美人になっていた。
- 周囲に合わせるだけの八方美人な態度では、自分の考えが相手に伝わらないこともある。
「八方美人」の類似表現
八面玲瓏(はちめんれいろう)
誰とでも円満に付き合えるという点では近い表現です。
「八面玲瓏」は、心にわだかまりがないことや、交際ぶりが円満で巧みであることにも使われ、「八方美人」ほど非難の意味に限られません。
日和見主義(ひよりみしゅぎ)
形勢をうかがい、自分に都合のよい側につこうとする態度を指します。
「八方美人」が人との接し方について使われるのに対し、「日和見主義」は状況や力関係によって立場を決めることについて使われます。
「八方美人」の古い用例
1893年(明治26年)8月13日発行の『国民之友』第199号には、
「現内閣にして、八方美人主義を執り、」
という用例が記録されています。
現在確認されている辞書収録例の森鷗外『羽鳥千尋』(1912年)より19年早い例です。
この時点では「八方美人主義」という形で、政治上の方針を批判する表現として使われていました。
1904年(明治37年)の村井弦斎『食道楽 冬の巻』にも、
「八方美人主義」
という形があり、人の話しぶりについて用いられています。
明治期には、人物そのものを「八方美人」と呼ぶだけでなく、「主義」を付けて態度や方針を表す使い方も行われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「八方美人」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「八方美人」項。
- 日国友の会「はっぽうびじん【八方美人】」読者カード、2005年10月13日公開(『国民之友』1893年用例)。
- 日国友の会「はっぽうびじん【八方美人】」読者カード、2003年2月18日公開(村井弦斎『食道楽 冬の巻』1904年用例)。
- 公益財団法人忍郷友会「素読のすすめ 第52回『八方美人』」、2019年。
