乱診乱療
読み方:らんしんらんりょう
「乱診乱療」の意味
必要のない検査をしたり、不適切な診断や治療を行ったりすることです。
医療のあり方を批判するときに使われる、否定的な意味の言葉です。
「乱診乱療」の語源・由来
「乱診乱療」は中国古典の故事に由来する言葉ではなく、日本の近代的な健康保険制度を背景に使われるようになった医療用語です。
初期には「濫診濫療」と書かれました。
「濫」には、度を越えてむやみに行うという意味があります。
戦後には「乱診乱療」という表記も使われるようになり、現在はこの形が広く用いられています。
昭和初期から戦後にかけての資料を見ると、表記の移り変わりをたどることができます。
「乱診乱療」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「乱診乱療をする/行う」
医師や医療機関の診療について述べるときに使います。「乱診乱療をする医師」「乱診乱療を行う病院」などの形です。 - 「乱診乱療が問題になる」
病院や医療制度をめぐる問題として取り上げる場合に使います。「乱診乱療が社会問題になる」などと続けます。 - 「乱診乱療を防ぐ/なくす」
医療制度や管理体制について述べる場合に使います。「乱診乱療を防ぐ仕組み」「乱診乱療をなくす対策」などの形です。 - 「乱診乱療の〜」
後ろに「弊害」「実態」などを続けます。「乱診乱療の弊害」「乱診乱療の実態」などと使います。
「乱診乱療」の例文
- 不要な検査を何度も受けさせたとして、その病院の乱診乱療が問題になりました。
- 医療費を抑えるだけでなく、乱診乱療を防ぎながら必要な治療を保障する仕組みが求められます。
- 調査委員会は診療記録を詳しく調べ、乱診乱療が行われていなかったかを検証しました。
「乱診乱療」の類似表現
過剰診療(かじょうしんりょう)
必要な範囲を超えて診察・検査・治療などを行うことを指します。
「過剰診療」は量や回数が多すぎることを中心にいうのに対し、「乱診乱療」は不適切な診断や治療まで含めて批判する場合にも使われます。
「乱診乱療」の古い用例
1929年(昭和4年)3月25日の帝国議会に提出された、健康保険に関する政府の答弁書には、
「濫診濫療ノ弊ヲ生シ」
とあります。
当時は現在の「乱」ではなく「濫」を用いた「濫診濫療」という表記で、健康保険制度の運用をめぐる問題として使われていました。
1955年(昭和30年)6月24日の衆議院社会労働委員会では、「乱診乱療」という現在と同じ表記が繰り返し使われています。
健康保険財政の赤字をめぐる議論の中で用いられており、昭和30年代には現在の四字形が公的な議論にも現れていたことが分かります。
「乱診乱療」の間違いやすい使い方・表記
「濫診濫療」は単なる誤記ではなく、昭和初期の公文書や戦後の国会会議録にも見られる歴史的な表記です。
現代では「乱診乱療」と書くのが一般的です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「乱診乱療」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 「衆議院議員清水留三郎君提出健康保険ニ関スル質問ニ対スル答弁書」1929年(昭和4年)3月25日。
- 『第22回国会 衆議院社会労働委員会 第28号』1955年(昭和30年)6月24日。
