本末転倒
読み方:ほんまつてんとう
「本末転倒」の意味
「本末転倒」とは、根本的に大切なことと、枝葉の重要でないことを取り違えることです。
本来の目的よりも手段を優先するなど、物事の優先順位が逆になっている場合にも使われます。
「本末転倒」の語源・由来
「本」と「末」を対にして物事の根本と末端を考える表現は、中国古典に古くからあります。
『礼記』の「大学」には、
物有本末、事有終始、知所先後、則近道矣
とあり、物事には本と末、先と後があることを述べています。
ただし、『大学』に「本末転倒」という四字の語形があるわけではありません。
中国では宋代の朱熹の書簡などに「本末倒置」という形が見られますが、日本語の「本末転倒」がそこから直接成立したのかは明確ではありません。
現在の「本末転倒」という四字形が成立した時期についても、確かな年代を断定できません。
「本末転倒」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「本末転倒だ/本末転倒である」
物事の優先順位が逆になっていることを指摘します。「それでは本末転倒だ」などと使います。 - 「本末転倒している」
「考え方」「議論」「やり方」などについて使います。「議論が本末転倒している」などの形です。 - 「本末転倒の〜」
後ろに「考え方」「議論」「やり方」「見方」などを続けます。「本末転倒の考え方」「本末転倒の見方」などと使います。
「本末転倒」の例文
- 健康のために運動しているのに、睡眠を削って体調を崩しては本末転倒だ。
- 細かな書式ばかり直して肝心の内容を確認しないのでは、仕事の進め方が本末転倒している。
- 利用者の便利さより社内手続きを優先する本末転倒の対応を見直すことになった。
「本末転倒」の類似表現
主客転倒(しゅかくてんとう)
主となるものと従うものの関係が逆になることです。
物事の軽重を取り違える意味でも使われるため、「本末転倒」と重なる場面がありますが、人や物事の主従関係が入れ替わる場合にも使えます。
舎本逐末(しゃほんちくまつ)
根本をおろそかにして、重要でない末節を追い求めることです。
「本末転倒」が大切なものとそうでないものの扱いが逆になっていることをいうのに対し、「舎本逐末」は根本を捨てて末節を追う行動を表す言葉です。
「本末転倒」の古い用例
明治34年(1901)の第15回帝国議会衆議院本会議の記録には、大学増設をめぐる議論の中で
「本末顛倒ノ施政」
という表現があります。
「顛倒」の字を用いながら、政策の優先順位を取り違えているという、現在につながる使い方がされています。
大正5年(1916)に発表された河上肇の『貧乏物語』にも
「本末顛倒の見方」
という用例があります。
「本末顛倒の+名詞」という形で用いられており、現在の「本末転倒の考え方」「本末転倒の議論」などにつながる文型です。
「本末転倒」の間違いやすい使い方・表記
古い資料では「本末顛倒」「本末顚倒」と書かれることがあります。
「転倒」は、古くは「顛倒」と表記されることが多く、現代では「本末転倒」が一般的な表記です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「本末転倒」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「本末転倒」項。
- 中華民国教育部『成語典』「本末倒置」項。
- 『第15回帝国議会衆議院本会議第17号』明治34年3月21日、帝国議会会議録。
- 河上肇『貧乏物語』1916年。
