愛、屋烏に及ぶ
読み方:あい、おくうにおよぶ
「愛、屋烏に及ぶ」の意味
「愛、屋烏に及ぶ」とは、人を愛すると、その人に関係する人や物まで好きになることのたとえです。
「屋烏」は屋根にとまっている烏(カラス)のことです。愛する人だけでなく、その人の身近にあるものにまで愛情が広がる様子を表しています。
「愛、屋烏に及ぶ」の語源・由来
中国の古典に由来する言葉です。
『尚書大伝』巻三「大戦篇」には、殷を滅ぼした周の武王が、殷の人々をどのように扱うべきか太公に尋ねる場面があります。そこで太公は「愛人者兼其屋上之烏」と述べました。人を愛する者は、その人の家の屋根にいる烏まで一緒に愛する、という意味です。
前漢の劉向が編んだ『説苑』「貴徳」にも、「愛其人者、兼屋上之烏」というほぼ同じ表現が伝わっています。日本の辞書では、こちらを典拠として挙げるものもあります。
こうした「人への愛が屋根の烏にまで及ぶ」というたとえから、中国では「愛屋及烏」という成語が生まれ、日本語でも「愛、屋烏に及ぶ」「屋烏の愛」などの形で使われています。
「愛、屋烏に及ぶ」の使い方
「愛、屋烏に及ぶ」は一つのことわざとして引用する形でよく使われます。
- 「愛、屋烏に及ぶというものだ」
ある人への愛情が、その人に関係するものにまで広がっている様子を見て、このことわざに当てはまると評価するときに使えます。 - 「愛、屋烏に及ぶように、〜」
ことわざをたとえとして先に示し、そのあとに愛情が広がっていく様子を説明する形です。 - 「『愛、屋烏に及ぶ』のたとえどおり、〜」
実際の出来事がことわざの内容によく当てはまることを示すときに使います。
「愛、屋烏に及ぶ」の例文
- 彼は大好きな作家の故郷まで何度も訪ねており、まさに愛、屋烏に及ぶというものです。
- 姉は親友が大切にしていた古いカメラまで丁寧に手入れしていて、愛、屋烏に及ぶという言葉を思わせます。
- 応援している選手をきっかけに、その選手の出身地や所属チームまで好きになったのは、愛、屋烏に及ぶのたとえどおりです。
「愛、屋烏に及ぶ」の類似表現
屋烏の愛(おくうのあい)
「愛、屋烏に及ぶ」とほぼ同じ意味で、同じ故事に基づく表現です。「屋烏の愛」は名詞の形なので、「屋烏の愛を示す」「屋烏の愛を受ける」など、文の一部に組み込みやすい違いがあります。
惚れた欲目(ほれたよくめ)
好きになった相手を見ると、欠点までよく見えたり、実際以上にすばらしく感じたりすることをいいます。
「惚れた欲目」は愛する本人への見方が甘くなることを指すのに対し、「愛、屋烏に及ぶ」は、その人への愛情が周囲の人や物にまで広がることを表す点が異なります。
「愛、屋烏に及ぶ」の古い用例
日本では、仮名草子『可笑記』(1642年)に「愛は屋上の鳥にも及ぶ」に当たる表現が見られます。現在の「愛、屋烏に及ぶ」と語形は異なりますが、江戸時代前期にはすでに、人への愛がその周囲にまで及ぶという中国由来のたとえが日本語で使われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「愛、屋烏に及ぶ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 中華民國教育部『成語典』2020年、「愛屋及烏」項。
