読み方:たががゆるむ

「箍が緩む」の意味

緊張感や規律が薄れ、しまりがなくなることです。

人が気を抜いてだらける場合だけでなく、組織の規律やまとまりが弱くなる場合にも使います。

人について、年を取って気力や能力が鈍くなる意味で用いられることもあります。

「箍が緩む」の語源・由来

「箍(たが)」は、桶や樽の外側にはめて、板を締め固める竹や金属製の輪です。

木製の桶や樽は、箍によって周囲から締められ、その形が保たれます。

「箍が緩む」は、この輪が緩んで締め付けが弱くなる状態を、人や集団の緊張・規律が弱まる状態に重ねた表現です。

桶や樽の箍が緩むという文字どおりの状態から、比喩的な意味へ転じました。

「箍が緩む」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜の箍が緩む」
    「〜」には会社、組織、チームなど、規律やまとまりを問題にできる集団が入ります。「組織の箍が緩む」「チームの箍が緩む」などの形です。
  • 「〜て/〜後に箍が緩む」
    緊張が解けるきっかけを前に置く形です。「試験が終わって箍が緩む」「優勝後に箍が緩む」などと使います。
  • 「箍が緩んでいる/箍が緩んだ〜」
    しまりのない状態が続いていることや、そのような状態になった人・集団を示します。「最近、箍が緩んでいる」「箍が緩んだ職場」などの形です。

「箍が緩む」の例文

  • 大きな大会が終わった安心感からか、選手たちは少し箍が緩み、練習への遅刻が目立つようになった。
  • 不祥事が続いているのを見ると、会社全体の箍が緩んでいると批判されても仕方がない。
  • 受験が終わった途端に箍が緩んだ弟は、毎晩遅くまで遊び歩くようになった。

「箍が緩む」の類似表現

気が緩む(きがゆるむ)

「気が緩む」は、本人の緊張感や気持ちの張りがなくなることをいい、個人の心理状態について使いやすい表現です。

「箍が緩む」は個人にも使えますが、「組織の箍が緩む」のように、集団の規律やまとまりが弱くなる場合にも使える点で使い方が広がります。

箍を外す(たがをはずす)

「箍を外す」は、規律や束縛から抜け出し、自由に振る舞うことです。

「今日は箍を外して楽しむ」のように、自分から制約を取り払う意味でも使えます。

「箍が緩む」は規律や緊張が弱くなっていく状態を表すのに対し、「箍を外す」は束縛を取り除く行為を表すため、主語と動作の捉え方が異なります。

「箍が緩む」の古い用例

『精選版 日本国語大辞典』では、河竹黙阿弥の歌舞伎『櫓太鼓鳴音吉原』の1866年(慶応2年)の記述が初めて世に出た実例として挙げられています。

同作は同年2月に江戸の市村座で上演され、そこでは「箍が弛んだ」という言い回しが使われています。

現在は「箍が緩む」と書くことが多いものの、江戸末期には「弛」の字を用いた表記で、すでに比喩的な表現が見られます。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「箍が緩む」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「箍が弛む」「箍」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。