采配を振る
読み方:さいはいをふる
「采配を振る」の意味
責任のある立場で人々に指示を出し、全体を指揮・運営することです。
チームの監督や組織の責任者など、多くの人をまとめて動かす立場について使われます。
「采配を振る」の語源・由来
「采配」は、もともと軍勢を指揮するために大将などが持った道具です。
柄の先に、細長く切った紙や白熊(はぐま)の毛などを房状に付けたもので、遠くにいる兵にも伝わるよう、振って合図を送りました。
16世紀以降、軍陣で広く使われるようになったとされています。
指揮官がこの采配を実際に振って軍勢を動かしたことから、「采配を振る」が、指図をして全体を動かす意味でも使われるようになりました。
「采配を振る」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜が采配を振る」
「〜」には、監督、責任者、リーダーなど、指揮する人が入ります。「監督が采配を振る」「責任者が采配を振る」などの形です。スポーツ記事でも、監督を主語にした用法がよく見られます。 - 「〜として采配を振る」
指揮する人の役職や立場を示します。「新監督として采配を振る」「現場責任者として采配を振る」などと使います。 - 「〜で采配を振る」
指揮する場所や場面を「で」で示します。「決勝戦で采配を振る」「現場で采配を振る」などの形です。 - 「采配を振る〜」
後ろに人を表す名詞を続ける連体形です。「采配を振る監督」「采配を振る責任者」などと使います。新聞記事の写真説明などにも「采配を振る〜監督」という形が見られます。
「采配を振る」の例文
- 新しい戦術を次々に試しながら、若い監督がベンチで采配を振った。
- 大規模な移転計画では、経験豊富な部長が責任者として采配を振ることになった。
- 予想外のトラブルが続く中でも、実行委員長は落ち着いて采配を振り、催しを予定どおり進めた。
「采配を振る」の類似表現
采配を取る(さいはいをとる)
意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「采配を振る」と並んで、指揮をする意味のお決まりのフレーズとして使われています。
「采配を振る」には、もとの指揮具を実際に振る動作が言葉の形として残っています。
指揮を執る(しきをとる)
人々に指示を与えて全体を動かす点では共通していますが、「指揮を執る」のほうが広い範囲で使える表現です。
「チームの指揮を執る」「工事現場で指揮を執る」のほか、音楽では「オーケストラの指揮を執る」ともいえます。
「采配を振る」は、監督や責任者などが判断を下しながら集団を動かす場面でよく使われます。
「采配を振る」の古い用例
1807~1811年に刊行された読本『椿説弓張月』には、「采配うち揮(ふり)」という言い回しがあります。
「采配」と「振る」を組み合わせた古い例として辞書に採録されています。
森鴎外の『阿部一族』(1913年)には、「表門の采配を振らせる」という形が見られます。
表門を受け持って戦いを指揮させる場面で、「采配を振る」が軍事上の指揮を表す言葉として使われています。
1920年7月2日の『大阪毎日新聞』には、アメリカの政党大会を扱った記事の見出しに「裏面より采配を振るタマニー派の巨頭」とあります。
戦場ではない政治の場面にも「采配を振る」が使われており、この時期には比喩的な言い回しが見られます。
「采配を振る」の間違いやすい使い方・表記
「采配を振る」と「采配を振るう」は、どちらを使うべきか迷いやすい表現です。
文化庁の平成29年度(2017年度)「国語に関する世論調査」では、「采配を振る」を「本来の言い方」として調査しています。
ただし、実際に「采配を振る」を使うと答えた人は32.2%で、「采配を振るう」を使うと答えた人は56.9%でした。
この結果を踏まえると、「采配を振るう」を一律に誤りとすることもできません。
『精選版 日本国語大辞典』では「采配を振る」の項に「振るう」も併記され、『広辞苑』第七版も「振るう」の言い換え方として「采配を振るう」を載せています。
もとの采配を振る動作に沿った従来の形を使うなら、「采配を振る」とするのが適切です。
「采配を振るう」も現代では広く使われ、一部の主要な国語辞典でも認められています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「采配を振る」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「采配を振る」「采配」項。
- 文化庁『平成29年度「国語に関する世論調査」の結果について』2018年。
- 『大阪毎日新聞』1920年7月2日。
