内憂外患
読み方:ないゆうがいかん
「内憂外患」の意味
「内憂外患」とは、国や組織の内部にある心配事と、外部からもたらされる災いや問題が重なっていることです。
もとは国家をめぐる語ですが、会社などの組織や個人についても使われます。
「内憂外患」の語源・由来
「内憂外患」のもとになる表現は、中国古典『管子』の「戒」に見られます。
『管子』は管仲一人の著作ではなく、戦国時代から前漢期にかけて形成された諸篇を集めた書物で、前漢末に劉向が校定しました。
「戒」には、次の一節があります。
君外舍而不鼎饋、非有內憂、必有外患。
「内憂があるのでなければ、必ず外患がある」という形で、「内憂」と「外患」が対になる言葉として使われています。
ただし、原文に現在と同じ「内憂外患」という四字の連続があるわけではありません。
関連する古い表現は『春秋左氏伝』成公十六年にもあります。
范文子の言葉として、
唯聖人能外內無患、自非聖人、外寧必有內憂
とあり、外が安らかになれば内に憂いが起こり得るという考えが述べられています。
ここでも現在の「内憂外患」という四字形そのものは使われていません。
現在と同じ四字形がいつ成立したかは明確ではありません。
遅くとも清代には、方苞の「兄子道希墓誌銘」に
「時弟妹皆幼、內憂外患、獨身當之」
とあり、「內憂外患」が四字続きで使われています。
この例では国家ではなく、一人の人物が家の内外から困難を受ける状況を述べています。
「内憂外患」の使い方
次のような形で使われます。
- 「内憂外患を抱える」
国・政権・会社などが、内部と外部の両方に問題を持つ場合に使います。「内憂外患を抱える政権」などの形です。 - 「内憂外患に直面する」
内外から同時に困難が迫っている場面で使います。「内憂外患に直面する企業」などと続けます。 - 「内憂外患に悩む」
内部の問題と外部からの圧力によって苦しんでいる人物や組織について使います。 - 「内憂外患の〜」
後ろに「時代」「状況」などを続けます。
「内憂外患」の例文
- 国内では財政難が深刻になり、国外では近隣国との緊張も高まって、政府は内憂外患を抱えていました。
- 主力部門から人材が流出する一方で海外企業との競争も激しくなり、その会社は内憂外患に直面しています。
- 家中の対立を収めなければならないうえ、周囲の勢力からも圧力を受け、当主は内憂外患に悩んでいました。
「内憂外患」の類似表現
内患外禍(ないかんがいか)
内側にある災いと、外から来る災いを表し、「内憂外患」と意味はほぼ同じです。
多くの場面で言い換えられます。
危急存亡(ききゅうそんぼう)
存続できるか滅びるかというほど差し迫った危機を表します。
「内憂外患」のように問題を内部と外部の二方向に分ける語ではなく、危機そのものの深刻さを示す場合に向いています。
「内憂外患」の古い用例
日本語では、天保九年(1838)八月朔日の文書を収める『徳川禁令考』前集第一・巻八に、
内憂外患一時に起り立候も御座候間
という用例があります。
「内憂外患」が現在と同じ四字形で使われており、江戸時代後期には国内の問題と海外からの問題を合わせて論じる政治的な語として用いられていたことが分かります。
同じ天保期、水戸藩主徳川斉昭が天保九年(1838)に起草した「戊戌封事」でも、当時の危機が「内憂」と「外患」に分けて論じられており、この二語が幕政や対外問題を論じる重要な枠組みになっていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「内憂外患」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「内憂外患」項。
- 『管子』「戒」。
- 『春秋左氏伝』成公十六年。
- 方苞『方苞集』巻十七「兄子道希墓誌銘」。
- 中華民国教育部『重編國語辭典修訂本』「內憂外患」項。
