読み方:ていしゅかんぱく

「亭主関白」の意味

「亭主関白」とは、家庭の中で夫が強い権限を持ち、自分の意向を妻や家族に通すことです。

夫が非常に威張っている様子まで含んで使われることがあります。

「亭主関白」の語源・由来

「亭主関白」の成立背景には、「関白」を強い権力を持つ人のたとえに用いる日本語の言い方があります。

「関白」は本来、成人した天皇を補佐して政務にあたった重職ですが、中世にはすでに、権力の強い人物を指す比喩としても使われていました。

室町時代末に成立した『文正草子』には、類義の「あるじくはんばく」という表現が見えます。

文正が客に酒を勧める場面で、

「あるじくはんばくと申事」

として、家の主人が先に杯を取ることを述べています。

家の主人を「関白」になぞらえる発想は、現在の「亭主関白」という四字の形より前から日本語にありました。

ただし、「亭主関白」が直接「主関白」から作られたと断定できる資料は確認されていません。

「亭主」は古くは一家の主人や宿などの主人を指す語で、夫を意味する用例は江戸時代の文献にも見られます。

現在の「亭主関白」では、この「亭主」が夫の意味で使われています。

「亭主関白」の使い方

次のような形で使われます。

  • 「亭主関白な〜」
    後ろに「夫」「父親」などを続けます。「亭主関白な夫」のように使います。
  • 「亭主関白だ」
    家庭や夫婦について述べる形です。「あの家は亭主関白だ」などと使います。
  • 「亭主関白を気取る」
    夫が、自分が家庭の支配者であるかのように振る舞うことを表します。「亭主関白を気取る夫」などの形です。
  • 「亭主関白ぶり」
    その人の強い態度や振る舞いを取り上げるときに使います。「昔ながらの亭主関白ぶり」などと続けます。

「亭主関白」の例文

  • 祖父は若いころかなりの亭主関白で、家の大事なことを一人で決めていたそうです。
  • 彼は結婚した途端に亭主関白を気取り始め、家事の分担まで自分の考えだけで決めようとしました。
  • 父の亭主関白ぶりに反発してきた母は、家族のことは話し合って決めたいと考えていました。

「亭主関白」の類似表現

夫唱婦随(ふしょうふずい)

夫が言い出したことに妻が従うことをいい、夫婦がよく和合していることを表す場合もあります。

「亭主関白」が家庭内で夫の権威が強いことを問題にする語であるのに対し、「夫唱婦随」は夫婦の関係や足並みがそろっていることにも重点があります。

嚊天下(かかあでんか)

家庭内で妻のほうが夫より強い権力を持つことです。

「亭主関白」と同じく夫婦間の力関係を表しますが、力を持つ側が逆になります。

「亭主関白」の古い用例

現在と同じ「亭主関白」という四字の形は、江戸時代前期の俳諧書『女夫草』上巻(1672年)に

「官位〈略〉亭主関白」

と見えます。

この用例では、現在のような「夫が家庭で権力を握る」という意味ではなく、亭主が客より上座に着くことを指していました。

同じ四字形が早くから存在しながら、意味は現在と異なっていた点が重要です。

現在につながる意味の早い例としては、1896年の三代目柳家小さんによる落語『橋場の雪』に

「尤も亭主関白の位あり」

とあります。

ここでは夫と女房の関係について用いられており、明治時代には「夫が家庭内で強い権威を持つ」という意味で使われていたことが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「亭主関白」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「亭主関白」「亭主」「関白」「主関白」項。
  • 広島大学図書館デジタルアーカイブ『ふんせう』。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。