乱暴狼藉
読み方:らんぼうろうぜき
「乱暴狼藉」の意味
「乱暴狼藉」とは、荒々しく暴れたり、無法な振る舞いをして人や秩序を害したりすることです。
単に行動が雑であるというより、周囲を顧みない荒々しい行為について使われます。
「乱暴狼藉」の語源・由来
現在の「乱暴狼藉」は、「乱暴」と「狼藉」という近い意味の言葉を重ね、荒々しく無法な振る舞いを強く表したものです。
「狼藉」は中国でも古くから使われた語です。
前漢の司馬遷が著した『史記』「滑稽列伝」には、酒宴の席が乱れた様子を、
履舄交錯、杯盤狼藉
と記しています。
「杯や皿が散らばっている」という意味の「杯盤狼藉」の一部で、この段階の「狼藉」は、物が入り乱れて散らかっている様子を指しています。
後世には、狼が草を乱した跡になぞらえた語源説明も行われました。
日本では、同じ「らんぼうろうぜき」という読みの古い形として「濫妨狼藉」が使われました。
『吾妻鏡』建久六年(1195)八月六日条には、地頭の後藤基清について「濫妨狼藉」を行ったとの訴えが記されています。
中世・戦国期の文書でいう「濫妨」は略奪や不当な権利侵害を指す語で、「狼藉」と並べて軍勢などの不法行為を表す例が多く見られます。
ただし、「濫妨狼藉」と現在の「乱暴狼藉」は表記が同じではありません。
現在と同じ「乱暴狼藉」の形がいつ一般化したのかは、確認できる資料だけでは特定できません。
「乱暴狼藉」の使い方
次のような形で使われます。
- 「乱暴狼藉を働く」
人や集団が起こした行為を述べる形です。「酔って乱暴狼藉を働く」のように続けます。 - 「乱暴狼藉の限りを尽くす」
荒々しい行為を徹底して繰り返す場合に使います。 - 「乱暴狼藉が〜」
行為そのものを主語にして、「続く」「問題になる」「収まる」などと続けることができます。
「乱暴狼藉」の例文
- 酒に酔った客が店内で乱暴狼藉を働き、警察が呼ばれました。
- 武装した一団は村で乱暴狼藉の限りを尽くし、多くの住民が避難しました。
- 一部の参加者による乱暴狼藉が問題となり、主催者は警備体制を見直しました。
「乱暴狼藉」の類似表現
傍若無人(ぼうじゃくぶじん)
周囲の人を気にかけず、勝手気ままに振る舞うことをいう言葉です。
暴力や破壊を伴わない言動にも使えるため、行為の荒々しさを表す「乱暴狼藉」とは使える範囲が異なります。
悪逆無道(あくぎゃくむどう)
人の道にはずれた非常に悪い行為を強く非難するときに使います。
暴力に限らず重大な悪事全般を対象にでき、行為への道徳的な評価が強く表れる言葉です。
「乱暴狼藉」の古い用例
江戸時代末期には、現在と同じ「乱暴狼藉」という表記がすでに見られます。
越谷市に伝わる大間野中村家の史料目録には、安政四年(1857)の文書として
「乱暴狼藉吟味願」
が記録されています。
少なくとも幕末には、この四字の形が文書の表題に用いられていたことが分かります。
福沢諭吉の『福翁自伝』は、1898年から1899年に『時事新報』へ掲載されました。
緒方洪庵の適塾での生活を回想する箇所に、
塾員は不規則と云わんか不整頓と云わんか乱暴狼藉
とあります。
ここでは暴力行為だけを指すのではなく、塾生たちの規律にとらわれない荒っぽい生活ぶりを形容しています。
夏目漱石の『吾輩は猫である』にも、1905年から1906年の連載中、
「乱暴狼藉の練修に余念なく」
という形が見えます。
鼠が家の中を荒らす様子を、誇張を交えて表した用例です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「乱暴狼藉」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「濫妨狼藉」「乱暴」項。
- 司馬遷『史記』巻126「滑稽列伝」。
- 福沢諭吉『福翁自伝』。
- 夏目漱石『吾輩は猫である』。
- 越谷市『越谷市デジタルアーカイブ』「大間野中村家史料目録」。
